日本鉄バイオサイエンス学会

BioIron2007京都フォローアップシンポジウム


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難治性貧血と鉄過剰-新たな治療法- :抄録

演者:大屋敷 一馬(東京医科大学 血液内科 教授)

現在の日常診療における難知性貧血とは主に造血幹細胞が傷害される「再生不良性貧血」と「骨髄異形成症候群」が対象となっています。

再生不良性貧血では自己のT細胞が造血幹細胞を攻撃する疾患で、骨髄異形成症候群は造血細胞の分化障害と増殖による形態的異形成を特徴とします。

これらの疾患では幾つかの治療法が提案されていますが、貧血治療に対しては従来通りの補充療法として輸血が行われています。

生体内では鉄の出入りは一定量を超えた場合には過剰鉄として蓄積され、実質臓器(主に肝臓、心臓、膵臓、性腺、など)の障害をもたらす事があります。

これらの過剰鉄の除去(徐鉄療法)は現状では非経口の徐鉄剤が用いられていましたが、近い将来には経口摂取による徐鉄剤が利用できます。

経口徐鉄剤は糞便中への鉄の排泄をうながし、効率的な徐鉄効果をもたらすことから、難治性貧血の患者さんへの輸血療法における鉄過剰症への対策の一つとして期待されています。


鉄と生活習慣病-上手に付き合って健康に- :抄録

演者:岡田 茂(岡山大学 教授)

「万里一条の鉄」という禅語に象徴されるように、鉄は永遠に連なる真理のようなものであるとの感覚を私たちは受け継いでいる。

地球上の最初の生命体から現在の多様 な生命形態に至るまでの連綿たる連なりに、鉄の果たしている役割を見ると、将に 「万里一条の鉄」は当を得ている。

鉄は生命を維持するためのエネルギー獲得反応で ある酸化還元反応の主役の座を占めており、過去、現在を通じて鉄を必要としない生 命体は考え難い。

光合成生物の発生以前、鉄は二価の酸化数を持っており、酸性・中性の環境では完全な水溶性であった。

ところが、海水中に光合成生物が誕生し、光合成の副産物として遊離酸素が発生するようになると、水に溶けていた二価の鉄は酸素と反応し、三価の鉄となっていった。

この鉄は海底に沈殿したので、これが現在では層状の鉄鉱層として露出しているところも多い。

すなわち、三価の鉄は中性付近では全くといってよいほど水に溶けない。

現在地上で見られる鉄は総て三価であり、水に溶けないので生命体はこれを摂取することが難しくなっている。

そのため、生命維持には強烈は鉄争奪戦が演じられている。

あらゆる生物は鉄を確保するための物質(キレート物質)を作り出している。

人の血中トランスフェリンもその為に特化したたんぱく質の1つである。

また、生物界を通じて鉄維持の別の方策は、鉄を排泄する機構を持たないことである。

すなわち、鉄はその生物体内ではリサイクルされている。

一方、鉄は非特異的にアミノ酸、クエン酸、アスコルビン酸、核酸などの多くの生体内低分子物質と結合し、水溶性を維持する。

このような鉄は広い範囲の酸化還元電位をとり得るので、多くの物質と容易に反応する。

鉄は荷電を二価←→三価と変化させることになる。

例えば有名なフェントン反応もこのような水溶性の鉄が触媒する反応の一つであり、その他の多くのフリーラジカル生成系の反応も鉄があれば容易に進行する。

すなわち、酸化ストレスの発生である。

このような状況が生体で起こる条件の1つが鉄過剰症におけるトランスフェリン非結合鉄の存在である。

このような理由で人には、鉄欠乏も鉄過剰も起こることになる。

鉄欠乏にならないためには、特に鉄吸収を促進するのは、ビタミンC, クエン酸?酸などの有機酸、香辛料であり、一食当たり多く含む食品としては、レバー、赤肉、牡蛎、納豆、ほうれん草、卵黄、大豆、ごま、そば、のりなどである。

検診では血清フェリチン値の測定を忘れないように。12(ナノグラム/ml)以下にならないように。


神経変性疾患と鉄代謝 :抄録

演者:宮嶋 裕明(浜松医科大学 准教授)

脳内に鉄沈着を来す神経変性症のaceruloplasminemiaやneuroferritinopathyの発見を契機に脳内の鉄サイクルが解明され、中枢神経系における過剰鉄の細胞背吐が明らかとなった。

代表的な神経変性症であるアルツハイマー病、パーキンソン病などの病態形成の過程で、生理的に発現した蛋白質が鉄などの金属の存在下で重合して可溶性のオリゴマーあるいはプロトフィブリルを形成し、これがシナプスの機能障害、あるいは神経細胞死のシグナルドメインの活性化を惹起し、神経細胞の変性を引き起こすことが提唱された。

また、脊髄小脳変性症のFriedreich失調症の原因は、ミトコンドリア膜蛋白で鉄のシャペロンとして機能するFrataxinの遺伝子異常であることが分かった。

これらの神経難病の治療戦略の一環として、中枢神経系の過剰鉄に対するキレート剤、鉄代謝関連物質に作用する薬剤の開発が今後の課題である。


胸膜中皮腫とアスベスト・鉄発癌 :抄録

演者:豊國 伸哉(京都大学 准教授)

アスベスト曝露に起因すると考えられる悪性中皮腫が社会的な問題となっている。

本邦においては悪性中皮腫が2025年付近まで増加の一途をたどることが予測されている。

アスベスト繊維の本体は天然の鉱物であり、工業的に主に使用されてきたものにはクリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)の3種類がある。

鉄音量が多いクロシドライトとアモサイトがヒトにおいて発癌性の高いことが疫学的に示されてきた。

アスベスト誘発発癌のメカニズムとしてこれまでに諸説(鉄や炎症を介した活性酸素説、繊維が染色体分配に異常を誘起する説、喫煙などに起因する別の変異原性分子吸着説)があるが、どの機序が主体なのか現在まで不明である。

既にアスベストを吸引した人における発癌予防を考えるなら、その発癌機構の解明が必要である。

これまで、私たちは鉄ニトリロ三酢酸投与によるラット腎発癌をフリーラジカル発癌と位置づけ、その責任遺伝子を探索・決定してきた。

鉄・中胚葉性という観点からアスベスト発癌との共通性が高い。

本発表においては、これまでのアスベスト発癌研究を概観すると同時に今後の方向性について述べる。


肝炎・肝がんと鉄制御 :抄録

演者:加藤 淳二(札幌医科大学 准教授)

C型慢性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)では、炎症が高度かつ肝線維化か進行したケースから、肝硬変および肝細胞癌(HCC)が発生し易いことが知られているが、その機序は不明である。

近年、持続登院炎症によって惹起される発癌過程には、細脳内で生じた活性酸素種(reactive oxygen species; ROS)による酸化的DNA損傷が関与する可能性が想定されている。

他方、C型慢性肝炎およびNASHの炎症増悪因子として肝細胞に蓄積した鉄の関与が注目されている。

鉄イオンはFenton反応等を介してヒドロキシルラジカル等のROSを生成し、酸化的DNA損傷を引き起こすことが知られている。

我々は、C型慢性肝炎の肝組織中に8-hydroxy-2’・deoxyguanosine(8-OHdG)が著明に蓄積していることを見出すとともに、瀉血と低鉄食栄養療法を併用した除鉄療法をC型慢性肝炎症例(F2/F3 grade)に約12年間行ってきた結果、炎症が改善するとともに肝内の8-OHdGの蓄積が解除されること※1、さらにHCC発生率が年率0.9%(対照群では3.9%)に低下することを報告してきた。※2

さらにNASHにおいても除鉄療法が炎症の改善に有効であることを報告した。

また、これらの疾患で肝に鉄が増加する機序として、C型肝炎では肝ヘプシジン発現の低下が、NASHでは十二指腸におけるDMT1、DcytbおよびHephaestinの発現増加が関与していることを確認している。

本シンポジウムでは、これまでの検討で得られた結果を中心に、肝炎・肝がんと鉄制御の関連性にについて述べてみたい。

文献

※1 Kato J, Kobune M, et al. Normalization of elevated 8-hydroxy-2'- deoxyguanosine levels in chronic hepatitis C patients by phlebotomy and low iron diet. Cancer Res 61:8697-8702,2001.

※2 Kato J, Miyanishi K, et al. Long・term phlebotomy with low・iron diet therapy lowers risk of development of hepatocellular carcinoma from chronic hepatitis C.J Gastroenterol 42:839-836, 2007.


鉄キレート療法の進歩と適正使用ガイドライン :抄録

演者:小渾 敬也(自治医科大学 教授)

骨髄異形成症候群や再生不良性貧血などの骨髄不全症候群では、輸血後鉄過剰症による臓器障害(心不全、肝硬変、糖尿病など)が問題となる。

我が国では、メシル酸デフェロキサミン(デスフェラール)という注射製剤がこれまで唯一の鉄キレート剤であったが、最近、経口鉄キレート剤のデフェラシロクス(開発名:ICL670)の治験が進んできている。

そこで厚生労働省特発性造血障害調査研究班で輸血後鉄過剰症の診療ガイドラインを策定した。

対象は骨髄不全症候群などを基礎疾患にもつ輸血依存の患者で、一定の余命が期待できるものである。

輸血後鉄過剰症における鉄キレート療法の開始基準としては、血清フェリチン値1,000ng/mL以上、および総赤血球輸血量40単位以上といった点を慎重に考慮し、総合的に判断するものとした。

血清フェリチン値が500ng/mL以下になった場合は、鉄キレート剤を中断する。

なお、鉄キレート療法により、造血障害の改善がみられる例があることは注目に値する。


我が国における骨髄不全と輸血後鉄過剰 :抄録

演者:中尾 償二(金沢大学 教授)

再生不良性貧血や低リスク骨髄異形成症候群などの骨髄不全患者において、赤血球輸血は最も重要な支持療法である。

免疫抑制療法や骨髄移植などの治療法が進歩したとはいえ、今なお多くの患者が定期的な赤血球輸血を必要としている。

これらの患者の予後に影響を与える最も大きな囚子の一つが鉄過剰症による臓器障害である。

赤血球輸血(1回2単位)の回数が20回を超えると、75%の患者で血清フェリチンが1000ng/ml以上となり、患者は色素沈着・肝障害・心不全・糖尿病などの鉄過剰症による症状を呈するようになる。

無効造血のため髄内溶血を認める例ではさらに早い時期から鉄過剰状態になりやすい。

最近の報告では、輸血による鉄過剰症は同種造血幹細胞移植の成績を悪化させることも示されている。

臓器障害の程度は血清フェリチン値とほぼ相関することから、輸血依存性の骨髄不全患者に対しては、不可逆的な臓器障害が起こる前に、フェリチン値を指標として鉄キレート療法を開始することが望ましい。


ミトコンドリアヘム鉄代謝異常と鉄芽球性貧血 :抄録

演者:張替 秀郎(東北大学教授)

ヘム合成系を構成する酵素は8種類で、最初の酵素である5・アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)と最後の3つの酵素はミトコンドリア内で機能する。

ALASには、非特異型であるALAS-N(ALAS1)と、赤血球特異型であるALAS-E(ALAS2)の2種類のアイソザイムが存在する。

ALAS以外のヘム合成系酵素の変異により発症する疾患はポルフィリン症であるが、ALAS2遺伝子の変異によって発症する疾患は、伴性劣性遺伝形式をとるX連鎖性鉄芽球性貧血(XLSA)である。

これまでに48家系のXLSAが報告され、34種類のALAS2遺伝子の変異が確認されている。

ALAS2遺伝子欠損マウスは貧血により胎生致死であり、その赤芽球では鉄の沈着が認められることから、症例における遺伝子解析だけでなく、実験的にもALAS2遺伝子がXLSA発症における責任遺伝子であることが証明されている。

ただし、遺伝性鉄芽球性貧血は単一の疾患ではなく、ALAS2遺伝子以外にも鉄代謝にかかわる種々の遺伝子の変異がその発症にかかわっていることが予想される。


赤血球造血と鉄代謝異常 :抄録

演者:高後 裕(旭川医科大学 教授)

鉄はヘモグロビンの構成分子で、生体鉄の多くがそのために使用される。

生体鉄代謝は、骨髄赤血球産生を調節する erythroid regulator (未開定)と、腸管からの吸収とRESからの遊離を調節する storage regulatorにより厳密に統御されると考えられ、後者の候補分子としてhepcidinが同定された。

赤血球楽生に必要な鉄の供給には、transferrin feceptor1(TfR1)を介して血清トランスフェリン鉄を取り込む機構が主体をなし、TfR1の発現は赤芽球分化の中期から後期に著しい。

これに対応しで血清中には可溶性 transferring receptor(sTfR)出現するため、sTfRは総赤血球産生のバイオマー力となりうる。

赤芽球の鉄代謝異常では、小球性低色素性貧血を示すことが多く、原因として多いのは鉄欠乏で、炎症時の網内系への鉄貯留による炎症貧血でもそれと類似の病態が生じる。

腎性貧血における鉄代謝異常も注目される課題で、病態に応じたエリスロポイエチン製剤と同時に鉄を適正使用することが求められている。

無効造血を含む慢性骨髄不全状態では、消化管の鉄吸収の亢進と、骨髄赤血産生を代償するための長期輸血は重篤な二次性鉄過剰症を引き起こす。

過剰の鉄は Fenton反応を介したラジカル産生を促し、肝臓・心臓などの臓器不全を起こし、患者の予後を大きく左右するが、適正な鉄キレート療法により改善可能となってきている。

赤血球造血と生体鉄代謝をin vitro, in vivo で的確、安定に測定、フォローアップする体系的システムの早急な確立が求められている。


“Secondary lron overload: lmplications of Non-lnvasive Measurement” :抄録

“Secondary lron overload: lmplications of Non-lnvasive Measurement”

Performer: John K. Olynyk,
School of Medicine & Pharmacology, University of Western Australia,
Fremantle Hospital Campus, Department of Gastroenterology, Fremantle Hospital,
Western Australia

Recent advances in the understanding of the regulation of iron transport have substantially improved our knowledge of the pathogenesis of iron overload.

In normal circumstances, iron absorption and losses are in balance.

Iron is stored in the marrow and liver and levels of toxic non-transferrin bound iron(NTBI) or labile plasma iron(LPI) are low.

When iron overload occurs as a result of increased absorption or exogenous administration via blood products or parenteral iron, storage levels increase along with NTBI and LPI.

The development of iron overload is associated with increased morbidity and mortality.

NTBI and LPI play important roles in this process as storage iron in the form of ferritin and haemosiderin may be biologically inert.

To reduce the risks of morbidity and mortality, accurate documentation of iron load and treatment with iron chelators is required.

Whilst simple measures such as serum ferritin are useful, they are limited by a lack of specificity for iron per se.

Noninvasive measurement using MRI technology has emerged as an excellent method for accurate and specific measurement of iron stores, especially in the liver.

Chelators have been the principle methods of reduction of iron stores in secondary iron overload related to haematological disorders.

These have evolved from parenteral to oral therapies, with the greatest recent advance being the development of deferasirox(Exjade, Novartis).

A combination of early assessment of iron overload and early introduction of iron chelation offer the best prospects for prolonged survival in patients with secondary iron overload.


“Should we care about lron Overload in Myelodysplastic Syndromes?” :抄録

“Should we care about lron Overload in Myelodysplastic Syndromes?”

Performer: Stuart Goldberg, MD
Chief, Division of Leukemia
Hackensack University Medical Center
Hackensack, NJ USA

The myelodysplastic syndromes (MDS) are a heterogeneous group of clonal hematopoietic stem cell disorders, characterized by ineffective hematopoiesis leading to peripheral cytopenias and possible future leukemia.

Although chronic red blood cell transfusions resulting in iron overload are common among patients with MDS, the ciinical implications and value of iron chelation therapy in MDS, remain unclear.

Retrospective data is emerging that transfusion dependency and iron overload,as measured by serum ferritin values above 1000 ug/l, are associated with inferior survival and increased rates of cardiac failure, liver disease, and endocrine dysfunction analogous to complications of transfusion related hemachromatosis seen in children with thalassemia.

Using the combination of number of lines of cytopenias,bone marrow myeloblast count, and cytogenetic features, it has been possible to develop a prognostic scoring system - lntemational Prognostic Scoring System(IPSS) - that identifies patients with MDS who are projected to survive long enough to suffer consequences of transfusional iron overload.

Up to one-half of MDS patients with lower IPSS risk disease become transfilsion dependent early in the course of their disease.

Two recent studies have suggested that iron chelation therapy in these lower risk MDS patients may improve long term survival.

A French cohort followed prospectively noted improvement of median survival for IPSS 0-1 patients from 51 months without chelation therapy to 115 months with effective chelation therapy, a benefit not identified among individuals receiving low dose chelation therapy.

A Canadian retrospective review in IPSS 0-1 lower risk patients reported improved 4-year overall survival rates of 80% and 40% among chelated and non-chelated cohorts respectively.

Additionally, younger MDS patients who might undergo future curative bone marrow transplantation therapy should be considered for chelation therapy as several recent retrospective studies have noted that elevated serum ferritin levels at the time of transplant are associated with increased infectious and liver complications, higher rates of graft-vs-host disease and decreased overall survival.

However, despite this data the use of chelation therapy in MDS has been sparse, in part due to the cumbersome prolonged subcuraneous administration schedule of deferoxamine.

The introduction of more convenient oral iron chelators may change treatment algorithms.

Deferasirox is an oral iron-chelating agent with favorable pharmacokinetics, in particular a long half-life that allows continuous 24-hr chelation with once-daily dosing.

Phase 2 and 3 studies have demonstrated that deferasirox produces dose-dependent reductions in serum ferritin and liver iron content and non-inferiority in term of clinical efficacy to deferoxamine.

ln vitro and in vivo studies have suggested that deferasirox reduces cardiac iron levels and improves cardiomyocyte contractility, suggesting a potentially important role in reducing the excess cardiac mortality demonstrated in transfusion dependent MDS patients.

Deferasirox has been well tolerated with favorable patient satisfaction reports.

Non-progressive renal insufficiency and gastrointestinal disturbances are the most common adverse events, but can be adequately managed by dose reduction.

Combined with advances in medical “low intensity" therapies in particular the newer hypomethylating and immunomodulatory agents, it is hoped that attention to transfusion related iron overload will improve outcomes for individuals with MDS.


Lipocalin, mammalian siderophoreと鉄代謝 :抄録

 演者:森 潔、向山 政志、中尾 一和 (京都大学内分泌代謝内科)
 演者:Jonathan Barasch (コロンビア大学腎臓内科)

Neutrophil gelatinase・associated lipocalin(Ngal )は、好中球由来分泌蛋白で、脂溶性リガンド のキャリアーであるリポカリンスーパーファミリーに属する。

Ngal 蛋白は赤色を呈しており、siderophoreを介して間接的にFe3+イオンと結合することが報告された。

siderophoreは細菌、真菌、植物などが鉄濃度の低い環境で鉄を有効に回収するために合成、分泌する小化合物の総称であるが、哺乳類における構造や役割は全く不明である。

我々はNgal の新しい生物学的作用として、腎臓分化誘導と腎障害軽減の2つを明らかにした。

これらの作用は大腸菌由来siderophoreとFe3+の共存により著しく増強された。

また、マウス、ヒト尿中には、Ngal とFe3+の結合を媒介する活性を認め、尿中にはmammalian siderophoreが存在すると考えられた。

Ngal はsiderophore依存性に多彩な作用を示すことが続々と報告されているので、今後、mammalian siderophoreを同定し、その生物学的意義を更に解明したい。


ヘプシジンと腎性貧血、最新の知見 :抄録

 演者:友杉 直久(金沢医科大学 教授)

ヘプシジンの過剰産生け、過剰鉄、炎症、さらに骨髄造血機能低下などの状態で誘導され、貯蔵鉄を利用できない機能的鉄欠乏状態に陥らせる。

これは、血液透析患者の皆既貧血でしばしば認められる病態である。

そのため、貯蔵系鉄を造血系鉄にシフトさせる工夫が治療に求められている。

理論的には、骨髄造血機能低下状態を改善させ、それに伴い必要とされる鉄を貯蔵鉄から補給し、それでなお造血に不足する鉄量を静脈投与することが基本である。

造血機能は、透析条件とエリスロポイエチン投与で改善させ、鉄シフトは、血清活性型ヘプシジン・25と、フェリチンの推移から把握する。

鉄過剰状態では活性酸素・フリーラジカルの発生で組織が障害され、臨床的には肝機能障害、糖尿病、色素沈着、関節痛、心筋障害、内分泌腺障害などを引き起こすことが知られている。

不要な鉄投与を避けるため、血清活性型ヘプ シジン・25評価を加味した鉄投与基準を作成する必要がある。


Membrane lron Tansporter 研究の進歩 :抄録

 演者:軍神 宏美 (マサチューセッツ大学 准教授)

鉄の吸収に関する情報は、ここ10年間で、飛躍的に分子レベルで解明されてきた。

中でも小腸上皮細胞刷子縁膜に存在するDMT1は、2つのグループから独自の方法論に則してクローニングされ、1997年、ほぼ同時に報告された。

DMT1は、2価の金属とH+とが共役し、細脳内に金属を取り込むトランスポーターである。

DMT1は、小腸上部に著しく発現し、鉄が欠乏すると、DMT1のメッセージは激増する。

また、DMT1は、小腸以外に、赤血球からの鉄の取り込みに深く関わっている。

DMT1以外にも、鉄トランスポーターとして、Fpnが重要な役割を果たしている。

ただし、Fpnは、DMT1と異なり、鉄の移出を司る。

すなわち、Fpnは小腸上皮細胞側底膜にあって、DMT1によって刷子縁膜側から取り込まれた鉄を生体側に受け渡す。

ジーンターゲティング法を用いて作製したノックアウトマウスから、DMT1は、小腸上皮細胞刷子縁膜での主要な鉄のトランスポーターであるが副次的な分子も存在しうることが示唆された。

一方、Fpnは、小腸上皮細胞側底膜固有のトランスポーターであることが示された。


『鉄と上手に付き合って健康に』 プログラムレポ [2008/02/16]

■ 市民公開講座 『鉄と上手に付き合って健康に』-----------------14:00?16:30
市民公開講座 開会挨拶

高後 裕(旭川医科大学 教授)
高後 裕(旭川医科大学 教授)

講演 1 「見逃されてきた鉄欠乏性貧血一診断と治療」

司会:斉藤 宏(河村病院 顧問)

内田 立身(香川県赤十字血液センター 所長)
演者:内田 立身(香川県赤十字血液センター 所長)

講演 2 「鉄と生活習慣病一上手に付き合って健康に」

司会:林 久男(愛知学院大学 教授)
演者:岡田 茂(岡山大学 教授)

講演 3 「難治性貧血と鉄過剰一新しい治療法」

溝口 秀昭(埼玉県赤十字血液センター 所長)
司会:溝口 秀昭(埼玉県赤十字血液センター 所長)

大屋敷 一馬(東京医科大学 教授)
演者:大屋敷 一馬(東京医科大学 教授)


フォローアップシンポジウム プログラムレポ [2008/02/16]

BioIron 2007 京都 フォローアップシンポジウム(2日目 2008/02/16)プログラム

2日目 2008/02/16のプログラムPDF

■ 第二部 鉄代謝分子機構研究の新展-----------------8:30?9:45

新津 洋司郎(札幌医科大学 教授)、岸 文雄(川崎医科大学 教授)
司会:新津 洋司郎(札幌医科大学 教授)岸 文雄(川崎医科大学 教授)

1. Membrane lron Tansporter 研究の進歩(35分)

軍神 宏美 (マサチューセッツ大学 准教授)
軍神 宏美 (マサチューセッツ大学 准教授)

2. ヘプシジンと腎性貧血、最新の知見(20分)

友杉 直久(金沢医科大学 教授)
友杉 直久(金沢医科大学 教授)

3. Lipocalin, mammalian siderophoreと鉄代謝 (20分)

森 潔向山 政志中尾 一和(京都大学内分泌代謝内科)
Jonathan Barasch (コロンビア大学腎臓内科)

■ 第三部 骨髄不全と鉄過剰-----------------9:45?11:45

司会:深田 賢一(秋田大学教授)浦部 晶夫(NTT関東病院 予防医学センター長)

1. 赤血球造血と鉄代謝異常(20分)

高後 裕(旭川医科大学 教授)
高後 裕(旭川医科大学 教授)

2. ミトコンドリアヘム鉄代謝異常と鉄芽球性貧血(20分)

張替 秀郎(東北大学教授)
張替 秀郎(東北大学教授)

3. 我が国における骨髄不全と輸血後鉄過剰(20分)

中尾 償二(金沢大学 教授)

4. 鉄キレート療法の進歩と適正使用ガイドライン(20分)

小渾 敬也(自治医科大学 教授)

休憩(コーヒープレーク)-----------------11 : 05?11: 25
■ 第四部 Biolron研究の将来展望-----------------11 : 25?12: 25

岡田 茂(岡山大学 教授)、西田 雄三(山形大学 教授)
司会:岡田 茂(岡山大学 教授)西田 雄三(山形大学 教授)

1. 肝炎・肝がんと鉄制御(20分)

加藤 淳二(札幌医科大学 准教授)
加藤 淳二(札幌医科大学 准教授)

2. 胸膜中皮腫とアスベスト・鉄発癌(20分)

豊國 伸哉(京都大学 准教授)

3. 神経変性疾患と鉄代謝(20分)

宮嶋 裕明(浜松医科大学 准教授)
宮嶋 裕明(浜松医科大学 准教授)

■ 閉会-----------------12 : 25?12: 30
閉会挨拶:Biolron2007京都フォローアップシンポジウム 代表世話人 高後 裕

フォローアップシンポジウム プログラムレポ [2008/02/15]

BioIron 2007 京都 フォローアップシンポジウム(1日目 2008/02/15)プログラム

1日目 2008/02/15のプログラムPDF

■ 開会挨拶 18: 00?18: 10

浅島 誠(東京大学 副学長)
日本学術会議副会長 浅島 誠(東京大学 副学長)

高後 裕(旭川医科大学 教授)
日本鉄バイオサイエンス学会会長 高後 裕(旭川医科大学 教授)

小渾 敏也(自治医科大学 教授)
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
「特発性造血障害に関する調査研究」班 班長 小渾 敏也(自治医科大学 教授)

■ 第一部特別講演 18 : 10?19: 30

高久 史麿(自治医科大学 学長)
司会:高久 史麿(自治医科大学 学長)

特別講演 1 [40分]
“Should we care about lron overload in Myelodysplastic Syndromes?”

Prof. Stuart L Goldberg
Prof. Stuart L Goldberg (Hackensack University Medical Center)

特別講演 2 [40分]
“Secondary lron overload: lmplications of Non-lnvasive Measurement”

Prof. John K Olynyk
Prof. John K Olynyk (University of Westem Australia)

■ レセプション(東京會舘) 19 : 30?21: 00
1日目終了

BioIron2007京都フォローアップシンポジウムおよび市民公開講座の報告

 此の度は、BioIron2007京都フォローアップシンポジウムおよび市民公開講座にご協力、ご参加いただき、有難うございます。

 去る2月15、16日の両日に、日本学術会議日本鉄バイオサイエンス学会厚生労働省科学研究費補助金「難治性造血障害研究班」3者の共同主催により、東京都有楽町よみうりホールにおいて開催、シンポジウムには270名、公開講座には179名のご参加をいただき、活発な質疑が行われ、成功裡に終了いたしました。

 本シンポジウムは、昨年4月に京都で開催された国際バイオ鉄学会総会の成果を広く我が国の医師・科学者、一般国民に広く伝達することを目的として行われましたが、初期の目的を十分達成できたものと思います。

 これも、ひとえに会員各位のご協力によるものと篤くお礼申し上げます。関連資料等については本学会ホームページ(http://jbis.sub.jp/)に掲載いたしますのでご参照ください。

 本年は9月13・14日に、定例の学術集会が青森市において渡辺清隆会長のもとで行われますので、引き続きご参加いただければ幸いです。


BioIron 2007 京都 フォローアップシンポジウム(2008/02/15?02/16開催:東京)

BioIron 2007 京都 フォローアップシンポジウム
pdfファイル
BioIron 2007 京都 フォローアップシンポジウム
「BioIron 研究の新時代」